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From Editor/インテリアとしてのキッチン

2018/05/07

昨年、ドイツでいくつかの住まいを撮影する機会を得ましたが、印象的だったのは日本のようにキッチンを壁面収納で埋め尽くさず、収納やカウンターの前後左右に余白をもたせていたこと(写真)。埃がたまって掃除しにくい、収納を増やしたいという声が聞こえてきそうですが、空間に家具を置いている感じに見えて個人的にはとても新鮮でした。キッチンは、住まいのなかで作業効率が求められるスペースとして、日本では機能優先でつくられてきました。都市部の地価が高い日本の住宅事情や私たちのライフスタイルの変化に伴い、住まいのプランニングはワンルーム化されたリビングとダイニングが主流に。もちろんキッチンはそこにオープンなかたちで据えられ、機能に加えてインテリアの一部として家具のような佇まいが必要となったのです。とはいえ、住まいをつくるうえで重要なのはコストバランス。何もかも上質な素材にはできません。住まいでは床やキッチンカウンターなど面積の大きなところに上質な素材を使用すると、インテリア全体のグレードが高く見えます。特にカウンターは、作業する人にとって常に目に入る場所であることもその理由の一つです。
先日、建築家から住宅プロジェクトについて相談がありました。そのなかで、キッチンカウンターの天板候補は、近年人気のあるクォーツストーンかセラミックだと説明されましたが、機能性はほぼ同じなので全体のインテリアのテースト次第だと答えました。素材の選択肢が広がることは、同時にデザインの幅をも広げます。照明器具やダイニング家具とコーディネートして、インテリアに溶け込むワンランク上の家具としてのキッチンをつくる。そのためには、設計の最初からインテリアをイメージしておくことが大切です。

April, 16, 2018  Elisa SUMITA, Editorial Director