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From Editor/住み手主動の住まい

2020/11/16

先日、あるマンションディベロッパーが一般公募した、コロナ禍におけるマンションでの「新しい暮らしのアイデア」の審査に参加しました。さまざまなものがありましたが、なかでも目を引いたのは、住まいで過ごす時間を充実させるために活用できるベランダ、プラスαのスペース、そして効率的な家事動線と使い勝手の良い収納でしょうか。
ベランダのアイデアを総合的にまとめると、そこにはテーブルやカウンターがあり、隣接して明るいキッチンが配置されているというもの。日本の家族のコミュニケーションは食にあることがよく分かります。本誌no.105では「カフェ・ホテルに学ぶ、住宅インテリア」という特集を組みましたが、皆、カフェのようにすてきなオープンキッチンやダイニングとしてのテラスが欲しいと考えているのでしょう。
また、プラスαのスペースで興味深かったのは、ウオークイン・クローゼットの使い方で、ドレッサーを置いて身支度を完結したい、防音設備を整えて音楽など趣味のスペースとしても活用したいなど。ここにワークスペースを設けるというのも一考かもしれません。家事動線や収納については、共働き世帯が増えているせいか、ランドリーと室内外の物干しスペースを近接させたい、エントランスのシューズクローゼットには靴以外のものも収納したいという意見が。もちろん、ほとんどは本誌で掲載されている住宅にあるものでしたが、日々の生活をストレスなく快適にしたい気持ちは皆一緒なのです。
それにもかかわらず、結局のところ、応募した人たちが住むマンションでは実現されていないということ。まずは分譲・賃貸共にマンションを計画する側が意識を変え、売り手主動ではなく、買い手や借り手が心地良い暮らしをかなえられる住まいを計画してほしいものです。魅力があれば、駅から少し離れた立地にあっても、皆、選ぶのではないでしょうか。


Elisa SUMITA, Editorial Director