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【新刊】Essential Final Touch テクスチュアが際立つ素材使いのアイデア

2025/01/20

人が手を動かすことで、期せずして生まれる揺らぎのある表情。職人の手仕事は空間に個性を与え、家に対する住み手の愛着を育みます。コストや工期などを含め住まい全体に手仕事を取り入れることが難しくとも、一部だけでも印象や空気感が変わるでしょう。ここでは手で仕上げた内装材やパーツを紹介しながら、その質感を引き立てる設計アイデアを解説します。

 

 

 

写真上/

 

手斧でざっくりとはつった野趣あふれる柱・梁


開放的な自然環境に囲まれて立つ菱田邸のキッチン(CH2250㎜)。クリ無垢材を主に用いた柱や梁は、自然の中の木々や素朴な民家を思い起こさせるように、樹皮を削った後、職人が手斧やマサカリではつって荒々しい表情を引き出した。ナラ材の面材を用いたキッチンカウンターと相まって、山小屋のような心地良い空気感を醸している。野趣を感じられる木の使い方は、周辺環境と住まいのインテリアをつなげる効果も。「菱田邸」設計/菱田工務店(no.117に掲載)

 

 

 

 

 

骨材を露出させた陰影をもたらす仕上げ


中庭と全面ガラス張りの壁でつながる廊下(CH2100㎜)。壁は打ち放しのコンクリートを高圧洗浄し、骨材の砂利や石を露出させた洗い出し仕上げ。露出の具合を見ながら超高圧洗浄で表情をつくり出した。コンクリートの荒々しさが引き出され、表面に光が当たるとザラリとしたテクスチュアが強く感じられる。外部の床も同様の仕上げとしているため、内と外がシームレスにつながる。またラスティックなコンクリートは、木製建具と対照を成し、互いの素材感を引き立て合う。「M邸」設計/手嶋保建築事務所(no.103に掲載)

 

 

 

 

レンガを壁に埋め込み、一枚一枚を際立たせる


木やレザーなど、経年変化を楽しむ素材を用いたリビング(CH2400㎜)。コンクリートの躯体壁にはレンガを埋め込み、印象的にデザイン。レンガを積んで目地詰めをする通常の方法と異なり、コンクリートが背景となることで、タイル一枚一枚の形状や色味が強調される。加えて、レンガとコンクリートの面をほぼフラットに納め、質感のコントラストも引き立てた。コンクリートが乾燥する際の収縮や手作業によってレンガの並びがわずかにずれ、デザインの個性となっている。「Y邸」設計/田頭健司建築研究所(no.123に掲載)

 

 

 

 

手のひらで擦る手法が味わいを生む唐紙
和室の収納の面材に貼ったのは、オーナー気に入りの作家、鹿児島 睦によるパターンを用いた唐紙。かみ添に特注した。具引きしたグレージュの和紙に文様を雲母摺りし、ナチュラルで凛とした雰囲気に。唐紙は板木の文様を和紙に写し取る手法で、版面に置いた紙の裏面を撫でるようにして柄をつけていく。手のひらで擦ることでムラのある立体的な模様になり、印刷とは一線を画した仕上がりに。「M邸」設計/スタジオCY 堀内 雪(no.118に掲載)